スローライフ(八)/信天翁
 
平均余命が一桁となった 
      老耄にとって
それは それは 想いがなごむものだ
   住宅街を素通りしたとき
   たまたま耳にした
   おさなごの弾んだ
   金切声の基調演説である

ちぎれ雲が浮彫にする 
        若き日の悔恨
それを背負っての道すがら
  アベニューが抱く枯れ葉を
        おのれに重ねたとき
おもわず行き交った見知らぬひとに
          挨拶をしていた
           「こんにちは」
         

       

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