うなぎ電車/天野茂典
駅は谷になっていて
陽射しが差し込まないで寒い
何を考えるのでもなく
電車を待っている
やがて電車はうなぎになってあらわれる
だれも驚くやつはいない
電車の中では本がよめない
電車の中ではトイレにゆけない
でも二区間だからなんとかなる
うなぎ電車は流線型だから
早いのだ
沿線の小駅を
つぶてのように
通過してゆく
うなぎ電車は特注ものだ
きょうも特注ものの
うなぎ電車に乗って
通所してくる
うなぎ電車に車輪はない
むしろリニア・モーターカーのように
浮きながら飛ぶのだ
したがって多量の水の供給が必要である
地震が来れば事前に察知して
ストップするのも特徴だ
次世代交通手段であることも確かだ
うなぎ電車よ
さあ ぼくもお出かけだ
戻る 編 削 Point(3)