あがりたの森へ/初代ドリンク嬢
 
外に
あがりたの森への道はない

あがりたの森はそこにある

それは
私の中では確かなことだった。

ドアをたたいた



ドアを開けてくれたのは私の苦手な穏やかで賢いあの人だった
黙って
戸惑っている私に
高い澄んだ声で決まり文句のように言った

「この階段をまっすぐに行くの」

その人は
少し体をずらして
ドアの向こうを見せた
そこには先の見えない急な細い階段が
上に向かって続いていた。

「通れるの?」

「もちろん」

彼女はそれが日常の行為のように大きくドアを開いて
私を促した


私は自転車を肩に乗せて
階段を上り始めた

ああ、
あの人はあがりたの森を知っているんだ
ちょっとだけジェラシーを感じながらも

息も切れ切れに

「あがりたの森へ行かなくちゃ」

そこが何なのか
何があるのか
どこにあるのか
私は知らない



そこに何があるのか
あがりたの森が何なのか
私は知らない


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