ひとり みちゆき/木立 悟
 





いつか
わからなくなっても わかるように
稲妻を連れてゆく
径より細く 径を照らす夜


音に分かれ
うたに分かれ
坂は水に沿い
ゆうるり光る


土を泳ぐ生きものが
何も見ない目で振り向きながら
森の奥へと消えてゆく
午後の入口から さらに奥へと


馬車は
楽園へ向かうのだという
うれしくもないのに うれしいふりをする
あの場所へゆくのだという


折り紙の光
通りに落ちて
よそ見から生まれた
小さな生きものに手わたして


右まわりを勧めて
すべては ほどけた
螺子の大地を
季節は幾度すぎたのか



[次のページ]
戻る   Point(2)