真夜中の岸辺/伊月りさ
 

ブラインドタッチのせせらぎに
あなたが流れている
まぶたをおろして
まるで ひとりでいきているかのように

真夜中の岸辺は
いくつもの蹠(あなうら)を傷つけるという母のおしえが
反射のように わたしから世界を鎖す

わたしには指がない
ので
石切をしない
   ようにするために
   指がない
   のだろうか、
わたしは濡れない、
という科学のような言い伝えを履いて駆けのぼり
立っている
ただ
真夜中の岸辺に
あなたが流れている
  あなたが流れているのに

背中
えぐられて
かわがきれて肉がのぞかないほどに血が覆って
いる わたしの
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