reaction/砂煙
 
夕暮れの残骸が
重くのしかかる西の空に
今日は今日も消えていく
名前のない主人公たちの夜が静かに始まり
何かが終わり何かを忘れていく
思い出してほしい
思い出してほしい 誰か
私たちの名前を
誰か思いだしてほしい
生まれたての真空に既に取り残されている
生まれたての真空はそっと瞼を閉じたまま
子犬と話す練習をしている
ワン!(聞こえない) ワン!(います、ここに、)
飼い主によく似て外の空気が好きで
寂しがり屋のあの犬が
もういないということを生まれたての宇宙が
知らないでいるのに俺は俺は俺は俺は俺は俺は
夕暮れが始まる それは心地よくて
今日が終わるという 感覚が
それだけで 心地いいことに
思えてきて あと何回続くか
歌声まみれの天使が廻る
言葉を持たない者たちの
やさしい眠りの夢に刃を
命ののしかかる町の空を西に
向けてみて
最初から名前のない
誰でもない私たちの
成長を
見守っていて
滲んだ顔の表面のインクを
青空に映したまま
夕暮れの町に
私たちは今日もいます

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