「卒業する」/ベンジャミン
に姿をかえて
嬉しさの一部をうっすらと隠してしまうのだろう
「おめでとう」
きみが壁にぶつかるたびに
何度も泣かせてしまったことが
少し心残りのような気がする
不器用であることは
けっして悪いことではありません
思い描けないことは
けっして何も無いわけではありません
卒業する前に
いくつか伝えておきたいこともあるけれど
きっと僕は何も言わずに見送るでしょう
「おめでとう」
それくらいしか言えない僕でいいのです
いままでにそうして何人も見送ってきたから
見送る人は見送られる人を振り向かせてはいけない
きみがそうやって卒業するとき
それはまた
僕がきみを卒業するときでもあるからです
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