かまきり/りす
朝
かまきり が袖を引く
貧弱な鎌をカフスに突き立て
出勤する私を引き留める
そんな鎌じゃ 草も刈れまい
まして人間なんて 狩るもんじゃあ ないよ
生地がいたむから
その鎌 どけておくれ
かまきりを振り払って
それっきり かまきりのことなんか
忘れてしまった
かまきりは 私の鞄にしがみついて
改札を通過していた
黒い鞄に 緑のかまきり
色合いが瞳に涼しいので
携帯で撮影して送信する
「!件名を入力してください。」
件名「かまきり」
朝
駅のホームで 白い錠剤を飲む
二錠 毎朝欠かさず飲んでいる
毎日のことなので 何に効く薬なのか忘れた
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