憂鬱の鎖/ただのみきや
 
なひげに感じながら



しかし わたしは犬として生まれ

犬として死んで行く これが現実だ

満腹したらそんな悩みも忘れて

不恰好な寝姿をさらす 夢の記憶も残らない

唸ることも吠えることも

鼻を鳴らすこともよだれを垂らすことも

生る限り続いて行く

揺蕩うしっぽ あの不思議な瞳の宝石に恋焦がれながら

もはや主人の愛情も薄れて久しい

  お荷物の老犬なのだ



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