朝を待つ/コーリャ
 
月よりも。なお人工物らしく。むしろここが月の裏側みたいな。水と砂漠の風物だ。抱きあって無理心中を後悔する海藻たち。砂の小丘に埋まったラジオは。そのまま小規模な音楽をながしながら落城し。無人島みたいに誰もいなかった。海が刺青した箇所をひたすら撫ぜながら。すこし―――。その光を思い出すことがある。暗闇とはいまでもときどき連絡を取り合う仲だ。缶コーヒーはまるで鉄を詰め込んだみたいに冷たい。タバコの匂いがしつこく潮の匂いに付け入る。彼は口当たりよく語りはじめる。例えば。そのあいだに。夜は白という色を。絵画を愛撫するみたいに。すこしづつ繋げていく。薬指はそんなときに役立つ。彼の隣で横たわっている女の髪を耳に
[次のページ]
戻る   Point(6)