草摘むおばさん/灰泥軽茶
 
五、六年前

朝の光に向かって

新鮮な空気と浴びながら

自転車をこいで出勤していると

週に一度は見かける草摘むおばさんがいた

公園にある小さなグランドのフェンスと

舗道の間に三角形の空き地があり

芝生のような雑草のような草が

ちょびちょび生えている

その草をじっと見つめて

まるまると屈み少しずつ大事そうに

摘んでいるおばさんは黒目がちで

なにか獣のようだった

今はもう会うこともないが

私の胸の内では年々

朝日を浴びて草摘むおばさんは

スローモーション

雲のように自由自在に変形し

まるまると屈み少しずつ大事そうに

その神聖な三角形の空き地を

耕し何かちょびちょび植えている




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