牢獄の女/田園
牢獄が私の家だった
手枷をジャラジャラと鳴らし
監守の持ってくるまずいパンと汁を待つのみの
私はそんな女だった
ある日
男が来た
男は理解できない言葉を
とても丁寧に話していた
だが私は何を言っているのか分からないので
ずっと下を向いていた
その日から男は
数分程度だが毎日来るようになった
そして理解できない言葉で
私に語りかける
私は下を向く
繰り返した
長く長くそんな日々を過ごした
ふと
私は自分が男の来訪を待っているのに気が付いた
人が居る心地よさを初めて知り
狼狽えた
また
男が来た
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