紫の 十字路/藤鈴呼
ございあせんから
謳い出さないで おくんなせぇ
相槌 打つくらいならば 得意なんですけれども
微妙なテンションで
太鼓ばかし 叩き切ってると
そのうち 撥が 当たりやすぜ
なんて 右上がりの イントネーションで
呟いてから ニヤリと笑う
そのテンションが たまらなく好きなんだと
隙だらけの横顔が 哀しく光るから
どうも 切ない
カモメは カモメ
海沿いの 町ですからね
山沿いの 庭園には
大きな鴉も 来園するんですよ
珍しい鳥かと思った お客様が
これ 何ですか なんて 興味津々な笑顔で
即座に横から カラスですよ、なんて
冷たい声が 響けば
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