心臓を踏む/はるな
 

そのときわたしは
夕やみが背中にきれいにかかるさまやみどりのこっくりと茂る影の不気味、ぼうっと灯る生活の模様やちゃりんちゃりんと鳴っているやさしげな時報に見いって、聞きいっていたのでやわらかく磨きあげた靴が心臓を踏んでいるのには気づかなかった

あとからふりかえってみれば優しくあろうとするときにはいつも 赤々しいあざやかな心臓を踏みつけているのだった
どこの誰の心臓かは未だに解らないが


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