冬と走狗/木立 悟
 




冷たい汗
夜の金の径
いつまでも響く
足跡の径


塩の岩 塩の波
街のすきま 
指のすきまを埋める白
痛みの音 静かな
水音


無垢の右目 狂気の左目
ふたつは常に 花を視る
花は常に
花の無い場所に在る


朝はあふれ 朝に消え
金は残り 影に漂う
東へ 東へ急ぐもの
奇跡の無いことを知っている



波が到き 光は離れ
影が降り 地は沈む
いのち無きものの
いのち無きおこないが
いのちを起こし
消してゆく



午後のはざま
弦のはざま
挿し入れられる
銀と鉛の指に震えて


風が増し
墓地
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