「空想距離・フラクタル次元の無限性のような幾何学的幻想」/ベンジャミン
 






水平線を断ち切るように見上げる


加速してゆく時代は
小さな出来事をかき消して
紙の上の真実は風に飛ばされてしまう


     ※


(渡り鳥が故郷を忘れないのは何故だろうか)


いつか僕らが生まれた場所が
すっかり姿を変えてしまったら
帰る道を辿ることはできないだろう


海は
その深さを隠している


空は
その高さを誇っている


(僕らはきっと ずっと憧れている)


後戻りができない時間と似て
とても正しく
とても切ない


そして どこか寂しい


海から飛び立つ飛行機を眺めながら
運ばれてゆく人を思うとき

違う高さを飛んでゆく海鳥の背は
けして重なることはなかった
  

そんな錯覚の中で
どこまでも広がってゆくものを
誰かが

空想と呼んだ


誰もが自由に飛べる世界を
やさしくふちどりながら


こうやって どこまでも

 
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