とある日(八)/信天翁
 
ゆく夏を惜しむ理由でもあるのか
  とぎれとぎれになってしまった
    ひねもす続いたアブラゼミの読経

くる秋を愛おしむ理由でもあるのか
  まぶしく映えて行き交うようになった
    蜻蛉の透き通ったシルエット

そして いま 遥かな昔 幼子だった頃
         電柱を陣地になぞらえ
親も夕食も忘れた 駆けっこをおもいだす

そうだ きっとそうだ
夢中ということはとても
          わびしいことだった

     

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