朝顔の顔/殿岡秀秋
 
青紫の花びらに
涙がひとつ
めしべの奥の
白い洞窟に
隠されているのは
新しいいのちが
育まれる仕組み

蜂がはいっていく
蟻が群をなしてはいっていく
ぼくもはいっていく
男は虫である
女は花である
嘘つきな男が
意地悪な女に
足をすべらせながら
しがみつく

ぼくは花粉まみれになりながら
きみに包まれる
そのとき
遠い空をたゆたっている
きみの表情を
見つめていると
ぼくの胸が弾んでくる
朝顔にはない
人間の顔だ


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