楓/
木立 悟
かえで
水の かえで
誰のものにもならない鳥が
目をふせ
何かを見つめている
少しずつ
少しずつ ひらく羽
雨の朝のかたすみの火
濡れた葉の色
羽の色
夜に痛む手
つもる かえで
涙を抄う手
つつむ かえで
花には音
木には羽
曇りの海
光は独り
遠のく緑
空に向かう手
しめす かえで
空の手に触れ
ひらく かえで
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