ノート(午後の尾)/木立 悟
そっといじけたような光でいる
まるくまるくなでられたいのに
そっぽをむいて目を閉じて
大きな花の実を食べている
ずっとむずがゆく思っている
ときどき次の次がほしくなる
少し高いところにのぼり
晴れと曇のむこうを呼び
生まれゆく雨のかたちを知る
やわらかな毛に陰が来て
水のにおいを落としてゆく
草の上でからだをよじれば
陽は半透明の空の傘
尾根の近くの頬をつつく
熱は熱から遠去かり
原へ原へと葉の背を歩む
水と銀と青の冠
緑の杯にそそがれる音
光を見つめる光の頬を
歌は静かになでてゆく
花の座には翼があり
こだまをこだまに返しては
粒たちの道を震わせている
灰はどこへいっただろう
ずっとうしろへいっただろう
雨の次がほしくてはずむ
やわらかなやわらかなあつまりは
風におされたくぼみのなかに
水の実を見つけて微笑んでいる
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