八月が終る/はるな
十八
すべりこむとうめいの音、(僕の)使えないなかみ
まちがい、溶け出した赤い右手と、黄色い耳と、走ってる車の、青白い音と十円玉でつけた引っかき傷がほんとうは気付いてるってこと、
ほんとうはみんな
気付いてるんだってこと
汚れたような顔で立ったり座ったりしてるけど
実際はそうじゃないんだってことも気付いてる
指紋が溶けてしまって(僕は)(君が)わからなくなる
つかえないきみを
置き土産にして
白い空を逃げる
そろそろ喰われてしまうのだ
焼けたひだりの脚と
死んだみぎの脚を交互に前に出すと
景色がかわってゆく
それを
おもしろいような気持で
眺め
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