ヤドカリボールペン日記/竜門勇気
けるのは数え終わった時にする
そばにいる誰かを呼び止めて
最初のページに丁寧に書いてもらうんだ
赤いボールペンで
大きな文字でも小さくてもいいから
丁寧に
最期だからさ
丁寧に書いてもらうつもり
そしたら僕は解き放たれた牢獄から
偽物の僕を引きずりだして
赤いボールペンの文字になるんだ
そして内側から鍵をかけて
赤いボールペンの文字を眺めながら
自分探しをはじめるんだ
夜の間打った鼓動に何もかもがある
眠る前に信じた妄想が
失敗に埋もれた些細な笑顔が
もう忘れそうだった傷の痛みが
何回も繰り返し噛み締めた嬉しいことが
世界中に合鍵をばら撒いときたかった
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