ファンタオレンジ/永乃ゆち
最後におばあちゃんを看取ったのは
お母さんだった。
「ファンタオレンジが飲みたい」
と何度も言っていたらしくて
「死んでしまうのだったら、いっそ飲ませてやればよかった。」
とぽつりと言った。
13歳の私は、おばあちゃんっ子だったのもあって
悲しくて悲しくて、わんわん泣いた。
遠くに住んでいて、年に1週間程度お盆にしか
会えなかったけれど、大好きだった。
お葬式には、私は出なかった。
おばあちゃんの最期の姿を見たいとも思ったけれど
見たくないとも思った。
あれからもう25年が経つ。
一
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