根と血、うつほ、プレーローマ/るか
心に残る風景
根によって地に繋がっているような、血によって不可視の掟に縛りつけられているような、そんな感覚が、今にして思えば、20代の前半くらいまでは確かに、一種の生存感覚としてあったことは憶えているのだ。人の感情も言葉も、はっきりとしたリアリティを持って体験されていたし、世界は、街は、ずっと生気に溢れて、カラフルだったように、かすかな名残のように思いだせる。
たとえば、中上健次の小説作品を私は10代の頃心酔して読んでいたものだが、それは青春小説というよりも、何か暗い多層的な差別と複雑な血縁関係との織りなす私小説的な物語に共感をしていたというよりも、やはり、既にして再現不可能な、近
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