鳥葬/紅月
 

幾億もの容器だったそれらはやがて鏡面になるから
網膜であるためのわたしを半分永らえてください
ください、と
凍傷だらけの醜い腕を上げては
さばかれることなく腕が下ろされるまでの一瞬を
贖罪と呼ぶのはやめて

ください、



みずから野に放った猟犬に噛まれ死んだ全知全能の羊たちを
弔うわたしの暴食は豪雨のようにはげしい
いつからか“世界”のなかで人間ではなくなったわたしの
瞳からは空白の比喩が流れているという比喩
殺戮とともに追悼がおとずれるさまはただしい咀嚼の光景であって
歴史を“痕跡”と呼ぶ語り手の腕は泥によごれている
うみだすことはころすことなんだよと
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