鳥葬/紅月
 
 
 
 
(いま、

すこしだけ
銀の傾斜を孕んでください、)




ください、
と口にすればそれからが暴食
窓際に一列に並べられた人影が
ひとりずつ喪われてゆくような気がして
かれらの消息を現像するべく
陽を閉ざしたあおい自室の中で凍傷がはぐくまれていた
“わたしたちの雪解け”という書き出しではじめられた原稿を
投げこむたび震える炎に利き手を翳し
ひどくしろい熱が冬を鮮明にかたどってゆくのだと
知ることまでが語彙の最果てだった

“明日までに半分死んでいるはずのわたし”
名付けられたはずの流星がおちて
いまでは名だけが空に添えられている
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