最後の一分/佐々宝砂
メタンガスもフロンガスも
もうどうでもよくなってきたけれど
おれは戦うしかないらしい
最後まで いや
最期まで
おれは抵抗すると誓ったのだから
ポケットに手を突っ込む
最後のパイナップルを使おうとして
まだ新鮮な香りをとどめている
はっさくひとつ
まだおれはこれを持っていたのか
くるりくるりくと回転するこの星には
牛のゲップが充満して
クロロフルオロカーボンが充満して
もうだめなんだよ
オゾン層は壊れてゆき
気温は毎日上昇してゆき
それでも最期まで抵抗する
おれたちはだからこそアパッチ族
植物もない
動物もない
この枯れ果て
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