日々の雑感/るか
 
世界が、たとえようもなく美しくかがやく時間がある。そんな時間のなかに心を浸して、陶然としていた記憶が。詩は、私が全く経験したことがなかったさまざまな事物の相貌を、風の感情を、人智の豊穣さを、私にたいし開示してやまなかった。そしてそれは、おそらく無上のある種の非情、残酷さと背中合わせだったように思える。白昼夢のなかへと自由に往来する子どものように、文字が奏でる音楽は、私を世界との濃密な交歓のなかへと招待して已まなかった。

 

自然は、幼い私の眼に、無限や永遠なものの生ける象徴のように感じられていた。それはある日、車窓から眺めていた岩肌や山深い木々のざわめきの中で、鳥肌立つような
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