「ヒグラシが鳴いている」/ベンジャミン
ようと鳴いているのだろうか
このたった一度の夏のために
過ぎてゆく日々にさよならを言うなんて
明日が約束されてもいない僕らにも
また次の夏を待つことは
はるかに遠い願い事なのかもしれない
台風が近づいて
その大きな風であらゆるものを荒らした後
まるで何事もなかったみたいな晴れの日に
ふと、思い出すことがあったら
(ヒグラシが鳴いている)
このたった一度の夏を
懸命に生きた証として
おもいきり叫ぶように泣くことを
ためらってはいけない
そして、
おもいきり叫ぶように笑うことも
ためらってはいけない
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