水のうえの釘/草野春心
 

  苔色の水のうえに
  釘が一本刺さっているのを
  みとめて、きみは
  小さく立ち止まった



  むし暑い夏の午後の風は
  邪悪な商人のように
  きみのポケットにはいりこみ



  何処かから忍び寄る
  レミングの冷笑が
  水のうえの釘を揺らした




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