わたし うつわ/木立 悟
 

放たれず置かれる やわらかな矢


にじみにじみ ふるえている
夜より高い 橋と回廊


ふつふつと曇を食べ 夜をすごす
今も 過去の何処にも
同じものを見ない


白に白にそそがれる道
影を知らないのなら それでかまわない


切っても切っても 切れぬ蒼に立つ
泡でも虫でも鳥でもあるひと


午後は午後に さらに細くなり
静かに消えゆく背を浮かべる


岩と少女が たがいちがいにつづく地に
無色の旗がたなびいている


白は軋み 青は高く
無音は無の地に さらに風を呼びこんでゆく


わたしはわたしから離され 何処にでも在る
すぐに消える花と 融けない氷から成る器のように


よく見えず よく聞こえぬ濁りのほとりに
わたしはわたしではないかのように並べられている































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