わたし うつわ/木立 悟
指から少し離れた宙から
水が こぼれおちてゆく
紙を三つに切り
ひとつ あまる
ところどころ 穴のあいた肉から
音が抜け落ちてゆく
鬼の子が二人
指を照らす光を見ている
風が壁に 石を立てかける
やがて壁も 石のひとつになってゆく
炎にひたす 風にひたす
何を 何かを
ただ 次々と
羽の無い背の羽を 口にふくみ
じっとしている
山が 鳥に散る
極楽は 狭すぎる
王国と雨 虹と花
視線呑む午後
焼ける空 影絵の葉
ふちどりの冬 ひらかれた門
弓が弓の宇宙をめぐる
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)