灯台へ続く道/カマキリ
 
またひとつ季節が終わる頃に

君には喋らないでいてほしい


まだ人のいる砂浜を横目に薄暗いトンネルに入る
さっきとは違いひんやりした空気に安心する
たくさんのことを思い出しながらだから
口から溢れ出るのはしょうがないけど


風の強い崖に出て
錆びた鉄柵にときどき触りながら
使用禁止と書かれたベンチのとなりに座る
外国の船ときらきらの船と荷物がこぼれそうな船を見る

僕らの髪を揺らしながらベタベタの強い風がまかり通る
それはさっき見た船の方へ走っていった
切り立った岩肌に手を当てて急勾配の階段を上がる
上からは、小さな犬が飼い主を忘れているように
ぺたんぺたんと面白いリズムで下ってくる

迷子のカニが横切ったり、釣り人からかすめとった小魚をくわえて
上手に岩場を飛ぶ猫に会えたり


もう一度だけ強い風が吹いて灯台が見えた


機嫌よく、そこらを回って見ているけど


またひとつ季節が終わる頃に

君には喋らないでいてほしい



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