山手線のドアーが開くたび/番田 
 

最終電車で
ロック風の格好をした若者たちが乗ってきた
ギターやベースを抱えている
黒い服の男たちに混じって 笑っている
紫色の服を着ている女の子がボーカリストと言うところか
そんな風に
キラキラした 汚れのない 彼らの姿を見ていると
観衆の前で演奏しているとても楽しそうな横顔が浮かんだ
そうだった
僕にもあんな風にバンドを組んでいた時期があったっけ
あの頃の僕は いつも 見えない方へとがむしゃらに走っていたっけ…


向かい合った席との距離はあまり遠くはなかったが
思えば ずいぶん遠くまで 流されてきたものだ
この場所は戻ることのできない寂しさに満ちている


戻る   Point(1)