夜わたる夜/木立 悟
 
のなか 街があり
岩や波に苦しめられ
そこに住まう小さなものには
目をつむるしか安らぎはなく


   どうしてもどうしてもふるえながら
   ただただ手をのばしたのでした
   すべての怒りの炎に
   焼かれてもいいと念じながら


   階段の上には
   失くしたものが山のようにあるのに
   今にも川に流されそうな
   ひとつの橋を見つめているのでした


雀の微笑みに囲まれ
巨きな巨きな しゃぼん玉に眠り
ついに虹のはじまりに至ったのに
見わたせば誰もいない


狼とともに吼え
影と影の森を孕み
失われた言葉たちと
赦されぬまま手を結ぶ


片目はどこまでも夜を昇り
もう片方はそれを見つめる
行方は涙で見えなくなり
小さな音が 小さな眉に降りそそぐ































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