(批評祭参加作品)お姫さまのキスを返せ/いとう
 
はそれを見せたいのではなく、作者にとってそれは作品内のパーツのひとつに過ぎない。しかも無自覚のパーツ。それを見せたい作品は、すなわち、ものさしのなさを前面に押し出す作品は、その概念を自覚していることが露呈されてしまうことによって、作品が硬直してしまう。
 
 同様に、読者が無自覚に概念のものさしを嵌めてしまうことによっても作品は硬直する。それは一見、作品の自由性・解放性を尊重しているように見えるが、その実、自由性・解放性というものさしをその作品に落とし込み、規定する行為に他ならないからだ。
 
 たとえば、お姫様に男根があるのは珍しくもなんともない。この世界ではお姫様に男根があるのが「あた
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