ゆいごん/蒼木りん
しあわせな夏の夜は
しあわせな夏の早朝へとつながっているけど
夏の昼間は焼け死んでしまう絶望さえ
わたしは家事をしなくてはと
ごまかして
人生を片付けていく
彼はまだ
今ごろ総武線に乗っている頃だろうか
雨が降ったり
寒かったり
人がすぐに死んでしまったり
隣のあの子がテレビに出たり
わたしは
ずっと風鈴の風になびく音を
蝉の止まない声を四十五回聴いた
救急車がよく通る病院につづく国道
電車がゆっくり走りだす眺めを
いつか
でなく
日陰に咲く小さい花として
ズルく
目立たなく
生きる
わたしの亡骸をお墓に終わないでください
蛛の糸で首を絞める
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