道を掃く人/岡部淳太郎
もうこれからは
咲かなくてもいいと思って
道を掃く人がいる
枯葉やら 紙吹雪
あるいは花びらと 花そのもの
それらで埋まった道を
木の箒で掃いていると
うっすらとにじんでゆくような
心持ちになってくる
いくつもの国や山河や
あるいは妖艶な夜の星ぼし
それらが興っては滅んでいった
それらの散乱した花のむくろで
埋めつくされた道を掃く
その人の手も いまや
ひとひらの紙切れや乾いた枯葉のように
うすく頼りない
草だとか藁だとか
あるいは花びら 花そのもの
それらの 吹けば飛ぶようなものたちを掃いて
道の端に寄せてゆく
いくつもの力や栄華や
あるいは面妖な陽の
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