河の記憶/灘 修二
春の日は、光のさざ波をうち、
夏の日は、黒いみどりとなってよどんだ。
秋の日は、木枯らしと荒れた波が流れを遡った。
冬の晴れた日は、凍る清み渡った水面に銀河を描く。
冬の雨の日は、河も空も鉛色。
何の詩情も流れていない。
白い息を手に吹きかけて、流れる河の記憶をたどった。
夏の夜、水上に花火が上がった。
歓声が上がった。
いつも花火を上げていたいか?
いつも歓声をあげていたいか?
痛い。
冷たい雨にうちひしがれた君に耳を澄まして、
ずっと黙っていた。
夏の花火が哀花となって、
一輪と咲いて
一輪と散っていく
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