刹那/吉岡ペペロ
 
にもならない理不尽に対しての怒りだった

今の理不尽は彼女自身が引き寄せているようだった

もしくは自ら理不尽の渦の中に入ってゆくようでもあった

おかあさん、またじぶんを呼ぶ声が聞こえた

おかあさん、彼女はじぶんでもそう呟いてみた

おかあさん、おかあさん、

呟くうちにじぶんがおかあさんなのかじぶんがおかあさんに話し掛けているのかじぶんがじぶんのおかあさんになっているのか彼女には分からなくなっていた

刹那のあいだ彼女は見つめていた

世代や時代がおなじいちめんに並んでいた

そのいちめんには祈り以外充満するものなどなかった






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