刹那/吉岡ペペロ
 
娘が東京に帰ってしまうと彼女はほとんど裸のままベッドに仰向けになった

そうやっているとスポーツに明け暮れた学生時代味わった失意と蹉跌を思い出した

自分の置かれている立場などいつも練習中見ていたはずなのだがコーチから宣告を受けたその夜家路をふらふらと辿った

ああ、あの夜道で、あたしは転んだんだ、どこを打ったのかを思い出そうとしたが彼女はそれをすぐやめた

おかあさん、そうじぶんを呼ぶ娘の声が聞こえたような気がしたのだった

理不尽にカッとくるのは今もそうなのだがそれはあの四年間の原動力だった

あの頃の理不尽には今よりも大義名分があった

彼女ひとりの力ではどうにも
[次のページ]
戻る   Point(2)