くれない綴り/千波 一也
 

その
日没に名前はない

幾重にも
さまよう翼が
無効を告げられるだけ

次々と
帰されるだけ


名もなき標は
明々と燃えながら
あまりに
静謐で

無数の火の粉が
我らに降る

貰い火が
勢いづいて
圧倒的にうつくしい


奇跡のうたが欲しければ
瞳を持てば
それで良い


その
日没に
名前はいらない

わずか数秒の永遠を
約束たちは知っているから

もう
十分だから






戻る   Point(8)