背の虫/nonya
 

背の虫はとても無口な僕に
東京行きの片道切符を買わせた

17歳の夏
立ち止まったスニーカー
中間試験当日の張り詰めた糸が切れた
背の虫はとても意気地がない僕を
ささやかなレジスタンスに駆り立てた

20歳の秋
青いまま落ちた毬栗
白い錠剤を数も数えず飲み込んだ
背の虫はとても卑怯な僕を
一番遠い所へ旅立たせようとした

今でも時々背の虫は
僕の猫背の内側で
ザワザワと鳴いてみせるけれど

いろいろなものを掴みすぎて
すっかり浮力をなくしてしまった僕は
なかなか旅立てないでいる

おそらくまだまだ途中の途中
ちょっと長くなってしまった小休止
背の虫が生き続ける限り
僕の旅は終わらない

終わらせてくれそうもない




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