背の虫/nonya
 

熱を帯びたむず痒さが
背中の真ん中あたりから
尾骨に向かって這い降りていく

机の上の観葉植物の彼方に
白い砂浜が見えたことにして
遠い目をしてやり過ごす

生まれた時から猫背の内側に
背の虫を一匹飼っている
衝動を餌にしているところを見ると
どうやら腹の虫の亜種らしいが
そいつはやたらと背骨に噛みついて
僕にのっぴきならない旅をさせようとする

5歳の夏
溶けかけたアイスクリーム
故郷に帰る祖母について行くと泣いた
背の虫はとても臆病な僕を
発車間際の急行列車に飛び乗らせた

11歳の冬
骨の曲がったこうもり傘
吹雪の朝たったひとりで駅へ急いだ
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