なつのいのり/
草野春心
かたすみで
ひざまづいているような
夜の闇に
蚊取線香のけむりが
しろく冷めてゆくのを
いのるように
きみは見ていた
胸に抱いた
夏のにおいは
こう言っていた
「ひとつだけあげるけれど
ひとつだけ、
きみからうばうからね。」
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