なつのいのり/草野春心
 
  

  かたすみで
  ひざまづいているような
  夜の闇に
  蚊取線香のけむりが
  しろく冷めてゆくのを



  いのるように
  きみは見ていた



  胸に抱いた
  夏のにおいは
  こう言っていた

  「ひとつだけあげるけれど
   ひとつだけ、
   きみからうばうからね。」



戻る   Point(5)