ストーリィ/由比良 倖
メイコさんは僕の腕を縫いながら、
私、21才です、始めてなんですよ、縫うの
「もう少し縫っていいかしら?」と言い
そこで僕は
見えない場所を切らせてあげた
見えない場所を縫わせてあげた
移植よりも難渋だった
僕の体はメイコさんの髪の毛だらけになった
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桜が見えるんですけど
「こういうのを敗血症というんでしょうか」
信号機がいくつも見えるんですけど
そして僕は落下しているように
街は浮いてるの?「違う」
静止している?
下半身は水のようにびしょびしょでした
「私はどこにいてもあなたに麻酔をかけられる」
「あなたは世界を裏返しちゃったから」
「あなたはあなたを裏返しちゃったから」
内臓を知るように世界を知るだろう
僕は傷付かない
僕は一生眠れない
肉体などはなおもいっそう
3
そしてここに
が誕生した
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