アレキサンドラ/智鶴
三日月は盲いたふりをして
星達は目を伏せ囁いた
空が瞬きする間だけ
僕達は自由になれたんだ
輝く夕暮れの碧色に
叶わない未来を描いた
指に絡んだ君の嘘に
気付いて知らないふりをして
君の胸に触れた左手と
右手に握られたアイスピック
乾いた氷が音を立てて
偽りの中へ消えていく
モノクロの夢の中で
有り触れた物語を
誰にも見付けられないように
抱えた腕に白い傷
哀しみが霧に散って
曖昧な苦味の中
まどろむ視界の先、冷たい音
チョコレートの香りに僅かな嘘
薄氷の上で踊って
薄らいだ世界の償いに
忘れた夢への偽りで
全て許されたつもりになれた
重ねる過ちのすぐ其処で
過ぎ去った未来の人影に
振り向いた僕の卑しさが
昨日を今日と気付かせた
愛されて戸惑う指先が
甘い薄色に溺れ落ちた
夢に消えた迷子の誘いに
拭い切れない惑いを預けた
滑らかな唇とカカオの甘さが
甘美な嘘を纏わせた
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