脅迫小詩集/佐々宝砂
 
誰もいない体育館でボールがはずむ
誰もいない音楽室でピアノが鳴る
誰もいない理科室で骨格が踊る

そんなことではない
そんなことなど恐るるに足らない
テケテケと足音ならぬ音をひきずって
やってくるあの存在があなたなのだ
あの存在にあなたはなるのだ


パターン3

あなたは後ろ暗い田舎のコンビニで
品出しをする値段をつける
店長は帰ってしまった
バイトはふたりきり

突然の来客はナイフを持っている
金を出せと言う
あなたはおののきながら金を出す
犯人は逃げる
あなたはカラーボールを投げる
投げる投げる投げるでも永遠に当たらない

あなたはそのコンビ
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