四四年の因縁/……とある蛙
蹴られたボールは
鋭く脇腹を抉るようにして
ゴールのサイドネットの
内側に突き刺さった。
その瞬間ボールを取られた
若者は目を覆い、次に
フリーランニングをしながら
雄叫びを上げるアステカの末裔を
グッと睨んだ。
ほんの一瞬の出来事だった。
キーパーからの緩いパスを受け
ゆったりとトラップして
ボールが体から離れた瞬間
彼の視線の横から
イノシシのようなずんぐりした
物体がボールを掠めて盗った。
ほんの一瞬の出来事だった
このまま同点でタイムアップしたら
延長まで もつかな?
僅かに掠めた疑念の先に
ボールが消えた
彼の視線の横から
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