沈められた瞳/atsuchan69
 
碧い夢の水面(みなも)を映した瞳は、
ただ見るともなしに忘れられた出来事を想いつづけ
あの日、高い山の頂から眺めた
無数のもがく手と足が遠い海までつづく
静かな、地獄図を見ている

秋の空を姿かたちのない声たちが風のように過ぎてゆき
鍔(つば)の破れた大きな麦わら帽をかぶり
白い長袖シャツを着た藁の案山子が、
羽をひろげた黒い鳥たちにいたぶられながらも
広い畑の真ん中で誰にも聴こえない声でそっと預言をつづけた

 ――牙、牙、
   そしておびただしい数の鋭い爪と牙! 

砂浜に転がった木片とか、
黒ずんだガラスの欠片だとか、
壊れた街の一部や
赤く錆びた巨大な
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